uotani aki

2020年1月27日4 分

諦めるのはまだ早い!困った要求吠え編

対象犬 マルチーズ 3歳 オス ペットショップ出身

当初問題行動  飼い主と離れると過度な吠え及び嘔吐

この犬(仮にマル)は、健康状態の良い犬であるが、飼い主が外出したり、一匹で車に残したりすると、何時間も吠え続けている。そして時々嘔吐もみられた。2歳になる少し前から外出のときに、落ち着きがなくなってきたとのこと。

飼い主は、しばらく様子をみていたが、嘔吐の回数がましてきたことで心配になったということで相談を受けた。

獣医師に診せたが嘔吐の原因は分からなかった。飼い主は「うちの子は分離不安症ではないか?」と疑っている。

飼い主家族は5人(父、母、祖母、成人の子供2人)である。母親が外出したときのみ、吠えや嘔吐が見られ、他の家族には反応しない。

母親がもっともマルの世話し、一緒に寝て、多くの時間を一緒に過ごしていることを考えると納得がいく。

話を聞く限りでは、家族のマルへの接し方は、特に問題ないように思えた。

マルが家族の中の誰かに恐怖をいだいている様子はない。

「分離不安症」であるかどうかは安易に判断することは出来ないが、母親がマルの視界からいなくなる(外出する・お風呂に行く・トイレに行くなど)と明らかに落ち着きがなくなる。

(*部屋の中にカメラを設置して、外からでもマルの様子を確認できるようにしていた。)

観察の結果、マルは母親がいなくなると吠える。そして吠えるとやがて母親は戻ってくる。

つまり、母親が戻ってくることがマルの報酬になっていると考えられた。

母親は、意図せずに報酬を与えていたことになり、吠えは日に日に増していくことになっていた。

また、母親は以前にトレーナーから「吠えにたいしては無視をしましょう」というアドバイスをうけていたことがわかった。このことがマルが嘔吐までしてしまう原因になった可能性がある。

なぜなら、いままで報酬を得ていた行動にたいして、あるときからその報酬が得られないとなると『消去バースト』が発生する。

要するに、いままで報酬を得ていた行動の頻度が一時的に多くなるのである。さらには、他の行動へと派生してしまう可能性もある。

人に例えると、『自販機にお金をいれボタンを押したのに、飲み物がでてこない。そうするとボタンを何回も押す(消去バースト)という行動をとる。それでも飲み物がでてこなければ、自販機を揺すってでも出そうとする』そんな状態である。

マルが嘔吐をすることで、母親は心配そうにする。

結果的に、母親はマルをもっとかまってしまうことになった。

嘔吐をすることに報酬を与えてしまったために、この行動は繰り返されるようになっていった。

そこで、母親に対して3つのアドバイスをおこなった。

1, マルだけを部屋に残して出て行った後、設置したカメラを使って中の様子を確認し、吠える前にマルの元に戻ること。

2, 母親がいなくなる予兆がすると落ち着きがなくなるため、マルが予測できないように振る舞う。

3, 寝るときには一緒の部屋ではなく、扉1枚を隔てるようにする。

1の実施は、当初忙しかった。というのも、マルだけを部屋に残して吠えない時間は、わずか数分であり、母親は部屋からでるとすぐに戻らなければ行けなかったからである。

ただ、3日間集中して取り組むことで、吠えない時間が10分・20分と徐々に増えていった。

1と同時に、面倒ではあるが、母親がいなくなる際の予兆(鍵をもつ、上着をきるなど)をしてもらうことで、マルの反応はだんだんと弱くなっていった。

3の実施は、母親の寝室は和室であり、襖で部屋を仕切ることが可能であった。

なので、片方の部屋にサークルを設置し、夜は別々の部屋で寝ることを勧めた。

犬と一緒に寝ることは悪いことではないが、ここでは行動修正のために、あえてそうすることにした。

幸運にもマルは静かに寝ることができていた。

結果:3カ月ほどで嘔吐はなくなり、半年で吠えは気にならない程度になっていた。

母親が買い物に行くなどして長時間の留守番となると、たまに吠えることがあるというレベルにまで落ち着いた。

今まで強化されつづけた吠え行動は、完全になくすことは難しい。そして時間もかかります。ですが、徐々に反応を弱めていくことは可能なので、諦めずにまずは3カ月続けてみましょう。

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