【今回の学び:怖がりを助長する飼い主の行動と改善方法】
以前、このような質問を受けました。
「散歩中、車を見るとパニックになって家に逃げるように帰って行きます。なんとかなりませんか・・・?」
あなたの愛犬は、どうでしょうか?
散歩中に何かを怖がって逃げることはありませんか?
『保護施設で長年育ったイヌ』や『ペットショップで長いこと過ごしていたイヌ』は外の世界を怖がることがあります。
これは子犬期における、環境に対しての刺激不足の影響によるものだと考えられます。
5年前に、わたしがとある保護団体から繁殖引退犬の子(推定5歳)を引き取りました。
その子も、外に出すとブルブル震えて一歩も動けない子で、その状態は1年以上続きました。
今はもう、外は全然平気になりましたが、当時は外の世界が怖かったことでしょう。
さて
質問者さんの愛犬は、過去に車によって怖い経験をしたことがないにも関わらず、パニックになるということですね。
状況としては、外に出ただけでは怖がらないが、走行している車を見ると怖がり、その後、飼い主さんを引っ張って家に帰ろうとするということです。
なお、飼い主さんはそのまま家までついて行くそうです。
この行動は、長期間継続して行われれているようなので、なにか報酬が発生していると思われれます。
-報酬はなんでしょうか?-
イヌはいったん車から逃げ出して家に帰るまでの間で、物理的な報酬(食べ物、遊び、飼い主の関心)はもらっていません。
ですが、イヌは家に着くまでの間に、安心感が体中にあふれています。
要するに、車から遠ざかる行動をしている間は、危険を回避できているということです。
『安心感は報酬』となります。
なので
車を見つける(刺激) ➡︎ 逃げる(反応) ➡︎ 安心感を得る(報酬)
という図式になり、逃げることが繰り返されるようになってしまうのです。
そうすると、イヌはいつまでたっても、【あの走ってる物体は自分にとって無害なんだ】ということが分からないまま、次の日も、また次の日も同じ行動をとらざるおえなくなります。
〔では、どうしたら良いか?〕
まず、『車から逃げる行動を妨害する』です。
妨害といっても、ただそこに立っているだけで良いのです。
要するに、引っ張られても動かずにその場でじっとするということです。
そうすると、逃げるという行動ができない。逃げなくても車がぶつかってくるわけでもなく、ただ前を通り過ぎていくだけなので、そもそも危険はない。
これはフラッディング(氾濫法)と呼ばれる方法ですが、イヌは激しい恐怖と不快を経験するため恐怖がさらに強まってしまうことの方が多いので、注意が必要です。
イヌは極端に怖がりながら逃げ出そうと必死になる。しかし逃げられないため、より一層恐怖に拍車がかかります。
もし、成功させようと思ったらイヌが疲れ切って逃げる(反応する)ことを諦めるまで、あなたは我慢しないといけません。
そこまでいくと、イヌは反応なしで恐怖刺激を経験していることになるので、うまくいきます。
なお、この方法は「倫理的にどうなんだ?」という問題があります。
もう一つの方法は、『車をみても反応しない距離で、イヌに良い刺激与えること』です。
対象から距離があると恐怖が薄くなり、逃げる(反応)が起こらなくなります。
例えば、トイレの中でゴキブリに遭遇するのと、道路で遭遇するのとでは恐怖レベルは違いますよね。
イヌが恐怖を感じても反応しない距離で、大好物な食べ物を与える。
すると、車という刺激が大好物が出てくる合図に変わります。
そしてさらに「お座り」をさせることで以下のような図式になります。
車(刺激)= 好物の出現
車(刺激) ➡︎ 座る(反応) ➡︎ 食べ物得る(報酬)
この方法を繰り返しおこない、徐々に距離を短くして行けば、最終的には
車をみても逃げることはなくなります。
この方が人道的ではありますが、時間がかかることはいうまでもありません。
〔まとめ〕
《散歩中、車を見るとパニックになって家に逃げるように帰って行く》
この行動を助長しているのは、飼い主さんが逃げるイヌについていってたからであり
それによって、イヌは安心感という報酬を得ていました。
そのため、「なんだ気にする必要ないんだ」と思わせることができずにいました。
イヌが恐怖を克服するためには、ある程度、恐怖刺激に晒す必要があります。
恐怖を克服するためのトレーニング方法は、主に2つ
『車から逃げる行動を妨害し恐怖刺激に晒し続ける』(フラッディング)
『車をみても恐怖反応がでない距離で、イヌに良い刺激与え、望ましい行動を教える』(古典的条件付け+オペラント条件づけ)
前者は、恐怖刺激が強すぎると、余計に恐怖が強まってしまうというデメリットはあるが
比較的はやく恐怖を克服できる可能性がある。
後者は、イヌにとって負担が少なく良いことが起こるので、トレーニング自体が楽しいものになります。一方で、恐怖の克服までに時間がかかることになるため、飼い主には根気が必要になるでしょう。
あなたの愛犬にも、なにかを怖がるようなことはありませんか?
逃げることは、危険な状況に対処しようとする自然な防御反応です。
しかし、暮らしに支障がでてしまっている場合は、少しでも克服できるように手助けしてあげることも必要ですね。
飼い主がついていかないようにする
恐怖を引き出す刺激を与えておいて、逃避行動を妨害する
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