こんにちは、悠さんです。
今回の記事はこちら↓の続きとなっています。
前回の内容では、私がドッグトレーナーになろうと決めた経緯、そしてトレーナー学校に入ってから2、3ヶ月ぐらいまでの話をさせていただきました。
入学して少し学校の雰囲気やルーク君との1人と1匹暮らしに慣れてきた時期ですね。
その辺りから、最初こそトリーツを使ってスワレの形を教えていましたが、それができるようになってくるとピンチカラーをつけて脚足行進、座る、伏せる、呼び戻すなどのトレーニングに励んでいたわけです。
そして、夏が過ぎたころから徐々にお客さまの愛犬のトレーニングもさせて頂くようになりました。

■お客さまの愛犬のトレーニング開始
お客さまの愛犬のトレーニングも、校長先生の指導を随時受けながら私が行っていました。預託訓練という名目で何ヶ月間も預けられているお客さまの愛犬です。
パピーもいれば、咬む・吠えるなどの行動上の問題を抱えている犬もいました。
愛犬を預けている飼い主さまからしたら「え?先生がやってくれないの?」という気持ちになるかと思うのですが、生徒にとっては実践で学べる数少ない機会になります。
自分の犬以外で、しかもすでに咬傷事案が起こっているような犬のトレーニングを、学生のうちにさせてもらえる学校は数が少ないかと思います。
警察犬訓練所の預託訓練が破格の安さだったりするのは、こういった事情もあるのかもしれませんね。
とはいえ、まだまだ『新米トレーナー見習い』の私がトレーニングするということはミスも多いのです。
罰を与えるトレーニングでミスをするというのは、かなり致命的になります。
犬の行動を良くも悪くも一瞬で大きく変えてしまうからです。
例えば『他の犬に向かって吠える犬』に対してピンチカラーを使用して、その行動をやめさせようとした時のことです。
教えてもらった手順はいたってシンプルです。自分の犬が他の犬に吠えたらリードを引いてショックを与える。これだけ。
要は「吠えたら痛いことが起こるからやめようね」ということです。
ですが、いざ実践してみると私は加減を間違えてしまい、もはや犬は悲鳴なのか吠え声なのか分からないぐらいに叫んでしまいました。
それこそ「なんだ?なんだ?」と夕食の準備をしていた人が家の中から出てくるぐらいの騒ぎです。
とはいえ、次からは他の犬に吠えなくなった・・のだったらまだ良かったのですが、その日を境に他の犬に対しての吠え方がヒステリックでぶちキレたように変わりました。
他犬に吠えると言っても、ガン見して吠えてくるような犬に対して吠えるぐらいだったのですが、おそらく犬=痛みという学習をさせてしまったために、より他の犬が嫌いになったようにかんじました。
(それまでは他の犬と挨拶ぐらいはできていたのに・・・)
ちなみにこれはルーク君の話です。
トレーナー学校に入ってまだ数ヶ月のことで知識も経験も浅いので、これで良かったのか?他に方法はないのか?と考えても答えは出ません。
ですがこの手法をお客さまの愛犬に使って、一発のショックで”吠えなくはなった”というのも実際にありました。なので無知な私はそれでもピンチカラーをつけて同じようにお客様の愛犬のトレーニングも続けていました。
■新たな道具の登場
練習を重ねると徐々にショックの与え方は上手になってくるもので、うまいことやれば犬の行動は即座に変わります。
これは人間側にとって強力な報酬となりますので、麻薬のように思考停止で依存してしまっていた気がします。
ですが、私が罰の使用に慣れるのと同じように、犬たちも明らかに罰の刺激に慣れていました。そのような場合、校長はピンチカラーのトゲの部分を削って尖らせたら良いと指導します。(もうやめてあげてって思いますけど)
また、ピンチカラーだとどうしても人間が犬の近くにいないと罰を与えられません。
呼び戻しなどの練習には不向きです。
そのため、次はこのような道具を使うことを勧められます。

E カラー(電気首輪)です。
犬の首に取り付けリモコンを使って遠隔で嫌悪刺激(振動or電気)を与えることができる道具です。
ただ、これも扱いが難しかったです。
電気が流れるビスが犬の首にぴったりと接していないと嫌悪刺激がうまく伝わりません。
意図しないタイミングで首に電気ショックがかかってしまったこともあります。
そのため、首に巻く部分を皮からゴムに変えてピタッとつくように細工したりもしました。
(愚かにもこんなところには頭を使う)
電気ショックを与える際、リモコンの方で強弱を調整できるのですが、これもかなり難しかったです。
例えば呼び戻しトレーニングの時のこと・・・
初めて犬の首に巻いて「来い!」と言いました。ですが犬は来なかったのでリモコンをピッっと押しました。
しかし、何も反応はありません・・私がビビって電気を弱めに設定していたからでした。
もう一度同じシチュエーションで「来い!!」と言っても来なかったので、スイッチを押しました。すると今度は「キャいん!!」と言って犬が飛び上がるほどのショックがかかってしまいました。
それからは呼んだら来るようにはなりましたが、耳は垂れ、尾は下がり、怯えたように戻ってくるようになりました。
犬によっては痛いはずなのにおそらく我慢している子もいるし、ものすごく弱くしても「キャいん!」と飛び上がってしまう子もいました。
校長にも叱られながら試行錯誤を繰り返し、少しずつ経験値をためていき、Eカラーの扱いも上手になっていきました。

もちろん、様々なトレーニングにおいて罰だけを使っていたわけではありません。
最初に犬が望ましい行動をしてくれたらトリーツを使いその行動を増やして、その後
こちらからの合図(キュー)に反応しなければ、ピンチカラーやEカラーで罰を与える。
これがベースになっていました。
■犠牲の上に成り立っている
ここまでの内容は
私がドッグトレーナー学校に入学してから、自分の愛犬やお客様の愛犬をトレーニングしていく過程で、犬に罰を与える道具の使い方を教わり実践していく話をさせていただきました。
罰の使用は今でこそ良くないと思っていますが、スクール時代は先生や先輩方、お客さま、同じ生徒同士、周りの人もみな同じように道具を使っていました。
そして上手くいった(ように感じた)ケースもあれば、トラウマ級の恐怖を植え付けてしまったこともありました。
ただ、やはり一番思うのは
罰を与える道具を上手に使えるようになるためには絶対に練習が必要であり
そして誰かがその罰の犠牲になっているということです。
このような道具を上手に扱い、魔法のように犬の行動を変えていくドッグトレーナーはたくさんいらっしゃいますが、彼らの技術も犠牲の上になりたっていることでしょう。
さて、2年間の学校生活を無事に終わり卒業したわけですが、そこからは自分でお客さまを見つけて今まで習ってきたことを実践しなければいけません。
責任は全て自分で背負わなければならないのです。
はたして上手くいくのでしょうか・・・?
(つづく)
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