なぜ、あえて『叱られること』を繰り返すイヌがいるのか?
「自罰的行動」というものを知っていますか?
罰とは、通常ある行動を抑制するために使用するものですが
自罰的行動とは、あえてその罰を受けるために行動をすることをです。
奇妙なことに、行動を抑制するはずの罰が、行動を促すための合図になってしまうのである。
これは、ヒトでもイヌでも見られる行動です。
例えば、飼い主の関心を引きたいイヌがいたずらをする。親の関心を引くために子供が非行に走るなどです。

過去に、叱られて嫌な思いをしたとしても、望み通り相手の関心を引きつけることができるなら自ら罰を受けに行っても構わないということです。
ただ「自罰的行動」は、罰を受けるときに”だけ”プラスに作用する場合に現れます。
つまり、飼い主に無視されてばかりいるイヌが、なんとか注目してもらおうと、罰を受ける行動パターンを発達させたことになります。
「たとえ嫌なことだろうと、なにもないよりはましだ」ということだと考えられます。
この自罰的行動の扱いは厄介です。
というのも、イヌがいたずらをしていない時(家具を噛んだり、同居犬にちょっかいをだしたり)は、飼い主は束の間の休息が得られます。ソファで「やれやれ」と横になることでしょう。
そうすると、結果的にイヌはまた無視されている状況になりますよね。
無視されているから、飼い主の気を引くために、イヌはまたいたずらを始める。
いたずらを始めると飼い主は叱りにくる(関心を向けてもらえる)。
叱られた後は、イヌは少し満足して落ち着くかもしれませんが、飼い主の気を引くために再びいたずらを始めることでしょう。
そうなると、イヌはこういう学習をします。
相手にされない➡︎いたずらする(行動)➡︎叱られる(報酬)➡︎嬉しい(イヌ)
この厄介さがお分かりでしょうか?
最悪の場合、飼い主は、叱っているのに何度もいたずらを繰り返すイヌに対して、フラストレーションが溜まり、さらにイライラしてしまう可能性があります。
すると、叱るという行動が発生しやすくなり、愛犬のちょっとした行動にも反応してしまうでしょう。
イヌとの関係性が、おかしな状態になってしまいます。
