top of page

報酬ベースのトレーニングなら失敗しても大丈夫


『報酬ベースのトレーニングはたとえ上手くいかなかったとしても、犬に与える害は特にない。一方で、痛み・不快・圧力など、いわゆる罰ベースのトレーニングは上手くいかなかった時、犬に与える害は計り知れない』

こんにちは、ドッグビヘイビアリストのゆうさんです。

犬のしつけやトレーニングをしようと思ったとき、あなたのどのような方法を選択しますか?



【報酬】「あなたにとって良い行動をしてくれた時に、犬にとって良いことが起こるようにする」ことでしょうか?

【罰】「あなたにとって良くない行動をした時に、犬にとって不快なことが起こるようにする」ことでしょうか?または、両方という方もいるでしょう。


犬のトレーニングでは上記の方法が使われることが多いのですが、どちらを選択する・しないかは人によって様々となります。


ちなみに、犬にとって報酬となるものは、食べ物・玩具・他者からの関心・散歩の機会など。そして、犬にとって罰となるものは物理的な痛み・拘束・無視・他者からの切り離し・大きな音・苦味などです。


そして罰を用いたトレーニングでは以下のような道具も使用されます。



●チョークカラー:(引っ張ると首が締まる構造になっており、犬に呼吸困難と不快を与える)

●ピンチカラー:(首輪の内側にトゲ状の突起がついたもの。引っ張ると締まる構造になっており、犬に痛みを与える)

●バーク:(首に巻く装置。犬の吠え声に反応して電気刺激を与える。)

●電子カラー:(首に巻く装置。遠隔で操作可能。人間がリモコンのスイッチを押すことで、犬の首に電気刺激を与える。)

●ビターアップル(苦味のする液体)

犬のマズルを掴む。叩く。力まかせに仰向けにするなども身体的な罰になります。


これらのツールを駆使して、犬の行動を変えたり出来ることを増やしたり、または特定の行動を減少させたりします。


ところで、報酬ベースと罰ベースまたはその両方、どれを使うのが犬や飼い主にとって一番良いのでしょうか?



結論は、報酬ベースです。



リンカーン大学が研究した『罰のみを使ったトレーニング、報酬のみを使ったトレーニング、そしてその両方を使ったトレーニングにおいて、どれがもっとも飼い主の指示によく反応したか』というリサーチ結果によると


報酬のみを使用した場合の方が、電子カラーやリードショックなどの嫌悪刺激を使用した場合よりも、短い訓練期間で犬の素早い反応が得られたということです。


もちろん、トリーツの与えすぎは体重増加や栄養不足などを引き起こしますし、おもちゃの使用も遊び方次第では興奮しやすい犬になったりします。


また、罰の使用を完全に否定するわけではありません。慎重にかつ適切に罰の強度を考え、ベストなタイミングで使用することが大前提となりますが、犬の行動を一時的に止めることができるからです。罰の使用は1回で終わらせるべきであり、何度も使用すると慣れが生じます。

そのため罰の使用後は、即座に報酬ベースに変えなければいけません。

効果的な罰の使用は人間側の訓練が必要です。

なので、プロが一般の飼い主さんに進めることは危険な行為となります


そもそも罰を使用するのは「相手の行動を変えること」が目的です。

罰を使わなくても望ましい行動を引き出すことはできますから、安易に罰を用いる必要は全くありません。




ということで

もし、あなたがこんなトレーニングをしていたら、いったん立ち止まってみてください。

毎日同じことを繰り返していませんか?


■『散歩中にあなたの愛犬が他犬・他人に吠えた。吠えたことに対して「こら!いけない」と言ってリードショックを与え叱る。』


■『愛犬があなたに甘噛みをしてきた。マズルをギュッと掴んで叱り、仰向けにする。』


■『家の中での吠えぐせが激しい。だから市販の無駄吠え防止首輪(Eカラー)を買って犬に着ける』


■『拾い食いをよくする。だから犬の口を無理やりこじ開けて咥えたものを出させる』


■『ハーネスを着けようとすると暴れる。だから2人係で抑えて着ける。』


これら全て罰となります。


このようの方法は罰を与えた時”のみ”は上手くいくことでしょう。

根本の解決にはなっていませんが、罰を使用することで犬の行動が一時的に変わります。それが人間側の報酬になってしまうことで、明日も明後日も同じことを繰り返す結果となるのです。


そのようなことを続けて、もし上手くいかなければどうなるでしょう?

もっと強烈な罰を使いますか?(例えば、チョークカラーをピンチカラーに変えるとか)


犬はあなたの側にいたいと思うでしょうか。

安心して過ごせているでしょうか。

何か不安なことがあった時、飼い主を頼るでしょうか。

犬は、やめてほしいことがあったらどうするでしょうか。


呼んでも戻ってこない。

家の中での居心地の悪さがストレスとなり常同行動が起こる。

不安なことがあれば吠えて自分で解決しようとする。

やめてほしいことがあれば、飼い主に対して噛む・唸るなどの攻撃手段に頼ることでしょう。なぜなら、犬はそう教わったから。



ちなみに、わたしも過去には上記のような罰を用いた方法を使っていましたし、プロになる前にみっちりと教えられました。「しつけのために犬に苦痛を与えることは致し方ない」と思っていた部分もあります。問題はいっこうに良くならず苦労しましたがね。

実際には他にもっと良い方法があることを知らなかった・・というただの勉強不足だったのです。


話を戻しますが

日々我慢している犬は、気がつかないうちに問題の芽が育ってます。

しかし、罰を使用することでその芽を一時的に隠すことができてしまいます。


徐々に大きくなった芽は、ある時攻撃行動となって現れるかもしれません。

それは他者だけではなく、犬自身に向けられることもあります。

自分の尾を噛んだり脚を舐めたりといった、いわゆる常同行動や常同障害です。



報酬ベースのトレーニングであれば、たとえ上手く出来なかったとしても、犬との信頼関係は損なわれません。あなたが練習を重ねていけば良いだけです。そして楽しみながら犬の望ましい行動を引き出すことができるでしょう。


一方、罰を使用することで人間にとっては簡単に犬の行動が変わったように見えます。

一見すると賢くなったように見えてそれは問題の芽に蓋をしただけです。そればかりか、犬からの信頼を損ないます。犬はどうしようもないストレスを抱え込んでしまい、それはどのような形で現れるかわかりません。



これから愛犬のトレーニング方法やトレーナーを探している方は、報酬ベースかどうかを一つの判断基準にしてください。チョークチェーンを勧められたり、仰向けやマズルコントロールをするように言われた場合は「おや?これはもしや・・」といったん冷静になって相手の話を聞くことをお勧めします。


子供にも犬のトレーニングを任せられる。それくらいの安心感が必要ですね。





















閲覧数:151回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page